Jul 04, 2011
レーザー脱毛してみたい
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【メガ再編時代】(上)
インドから届いた韓国企業のニュースに日本の鉄鋼関係者は衝撃を受けた。新日本製鉄と住友金属工業が来年10月の大型合併を発表する3日前、今年1月31日のことだ。
「韓国企業の製鉄所建設計画が再開することになりました」。インド駐在員からの電話で一報を受けた日本の鉄鋼大手幹部は「インドの鉄鋼市場は韓国が席巻することになるのか…」と焦燥感を募らせた。
計画を再開したのはポスコ。2009年の粗鋼生産量で6位の新日鉄を上回る5位につけた韓国企業だ。計画は6年前に動き出した1兆円の巨大事業。地元の反対で中断していたが、ようやく政府が許可した。
ポスコは昨年10月、インドネシアでも高炉建設に着手。高炉は製鉄所の心臓部で、東南アジアには1基もなかった。一連の動きには新興国で増大する鉄鋼需要を取り込む狙いがある。
新日鉄の宗岡正二社長は住友金属との合併で「(海外での高炉建設)実現の体力、人材を確保できる」と強調。視野の先には、ポスコの後手に回ったインドでの高炉建設もある。「主戦場は新興国」との認識は01年に世界首位から陥落した新日鉄にも共通する。
最大の壁は巨額の設備投資負担だ。高炉建設、製品や原材料を輸送する鉄道や港湾インフラの整備…。少なくとも数千億円に上る投資は「失敗すれば会社が吹き飛ぶほどのリスク」(宗岡社長)を伴う。
そのための経営規模の拡大。新日鉄の3倍近い生産を誇る世界首位のアルセロール・ミタル(ルクセンブルク)は今月2日、タイの鉄鋼大手の株式の40%を取得したと発表。同社は欧州や中米などの鉄鋼会社を次々に買収してきた多国籍企業だ。2〜4位が並ぶ中国でも昨秋、最大手の河北鋼鉄集団が5社合併を発表するなど統合を加速。合併すれば重複投資も避けられる。
再編を通じた大規模投資は鉄鋼業界に限った話ではない。韓国では1997年の通貨危機後、政府主導で半導体や自動車などの財閥企業を再編・統合。半導体で世界トップのサムスン電子はその後、投資を拡大し2008年には平均1千億円程度の日本企業を圧倒する約5千億円に膨らんだ。
あらゆる業界で進む海外勢の攻勢に日本は対抗できるのか。高橋恭平・石油化学工業協会会長(昭和電工会長)は「(アジア市場を取り込むには)中国などの大型の設備と伍(ご)していく必要があり、相当な危機感がある。生き残るための再編は必要だ」と語り、鉄鋼大手幹部もこう漏らす。「もう時間は残されていない」
■規模追求だけでは勝てぬ
海外展開を視野に入れて合併する新日本製鉄と住友金属工業を含め、日本企業が再編に向かう背景には、経済の構造変化もある。
「これでは、われわれの鋼板が入り込む余地がないじゃないか」。ある国内鉄鋼大手の幹部は、日産自動車が昨年、国内からタイに生産を全面移管した小型車「マーチ」の仕様を見て、絶句した。
マーチは9割以上の鋼板を日本以外の鉄鋼会社から調達。国内工場なら当たり前の鉄と自動車の密接な関係はなく、日本勢が得意とする軽くて強度のある高級鋼板も使っていない。それでも十分な性能を維持できるからだ。
円高で輸出が打撃を受ける中、自動車や電機メーカーには海外生産に動く例は多い。それが鉄鋼業界の変化を促す。鋼板輸出に伴う円高リスクの回避や輸送コスト削減のためにも、顧客と歩調を合わせた本格的な現地進出は欠かせない。ただ、海外展開を加速すればすぐに劣勢を盛り返せるわけでは、もちろんない。
■韓台製が台頭
中韓企業がタイに輸出する鋼板は日本製の同種品より2〜3割安い。割安な韓国ウォンや人民元も追い風で、価格勝負では日本の勝ち目が少ない。「顧客から見切りをつけられている」(大手自動車メーカー)との声まで漏れる。
戦後の日本企業は高い技術と品質に裏打ちされた製品で世界を席巻。だが、新興国企業が台頭してきた現在は、業界を問わず、価格の高い日本製の高級品よりも新興国企業による低価格の汎用(はんよう)品が重視される。
経済産業省の「産業構造ビジョン2010」は、米アップルが昨年発売した多機能端末「iPad(アイパッド)」と、6年前に出した同社の携帯音楽プレーヤー「iPod(アイポッド)」の部品を比較。アイポッドは大半が日本製部品だが、アイパッドは安価な台湾や韓国製で埋め尽くされ、日本の苦境が際立つ。
独自に進化した日本市場とは対照的に、世界の潮流から取り残された典型例とされる携帯電話の「ガラパゴス化」は、「技術を過信し過ぎるあまり、世界が求めるものを作らなかったから起きた」(柏戸傳(つたえ)・立正大教授)。同じ轍(てつ)を踏まないためにも、価格競争への対応や製品戦略の見直しは、あらゆる業界の共通課題となっている。
◆資源高に対応
事実、鉄鋼業界の場合は再編を促す要因の一つに原料用石炭や鉄鉱石の価格高騰への対応もある。英豪系資源大手のBHPビリトンは現在、四半期に1回の石炭価格交渉を毎月行うよう鉄鋼業界に要請。そこには値上げの機会を大幅に増やしたい思惑がある。
逆に、鉄鋼業界は原料の値上がり分を鋼材価格に転嫁しにくい。「資源メジャーの言いなりになって価格転嫁すれば、だれも日本の鉄を買わなくなる」(鉄鋼大手幹部)との危機感があるためだが、合併で規模を拡大すれば価格交渉力を高める効果も期待できる。
新興国での価格競争についても「生産コストを下げて価格競争力を高めるには一定の規模が必要だ」(伊藤邦雄・一橋大教授)。ただ、伊藤氏は同時に「規模追求だけで勝ち抜くことはできない」とも指摘する。
◆高品質低価格
新日鉄と住友金属の合併には、両社と業務・資本提携する神戸製鋼所は加わらなかった。建設機械や非鉄部門の売上比率が約半分を占めるなど事業形態が異なり、合併の相乗効果を出しにくいためだが、神鋼は海外戦略でも違いをみせる。
海外での高炉建設を目指す新日鉄などに対し、神鋼は低品位の鉄鉱石から純度の高い鉄塊を生産する独自の新型炉で勝負する。新型炉の1基当たりの粗鋼生産量は高炉の2分の1〜5分の1にすぎないが、建設費は10分の1以下で済む。
伊藤教授は「日本の企業は高品質かつ低価格の製品を生み出すことで製品の付加価値を高めるべきだ。低品位の原料を高品質に仕上げる技術は新興国市場でも活用できる」と語る。再編は海外勢に対抗する有力な手段だが、その成否は、あくまでも世界に受け入れられる事業戦略を再構築できるかにかかっている。
新日鉄と住友金属の大型合併など産業界で再編が相次いでいる。新興国との戦いで劣勢の日本企業はメガ再編で再生できるのか。その現状と課題を探った。
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